東京高等裁判所 昭和59年(行コ)19号 判決 1985年4月16日
東京都小平市小川町一町目六四七番地
控訴人
小野幸太郎
右訴訟代理人弁護士
太田也
東京都東村山市本町一丁目二〇番二二号
被控訴人
東村山税務署長
幸福啓次
右指定代理人
高須要子
同
琵琶坂義勝
同
沼澤勇一
同
長谷川貢一
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五五年九月三〇日付けでした控訴人の昭和五四年分所得税の更正のうち所得税額一二〇五万六〇〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張は、控訴人の当審における主張の補足、これに対する被控訴人の認否として、左のとおり付加するほかは原判決事実摘示及び別表一、二の記載と同一であるから、それをここに引用する。
(控訴人の当審における主張の補足)
本件土地は、控訴人から遠藤に引渡しがされ、支配の移転があつたとみるべきである。
すなわち、控訴人が本件の売買代金の半額にあたる残代金三七五〇万円を受領したのは、昭和五四年一一月一五日であるから、本件土地の引渡しは、右残代金受領と同時かそれ以後にされたとみなければならないところ、既にそれ以前の同年九月の段階で、控訴人・遠藤・城西建設の三者間において、本件土地の買主を遠藤に切り替えて農地転用手続をとる旨の合意が成立しており、同年一〇月三日には本件届出がされているのであるから、本件土地の引渡しは、所有権の移転を受けることが明らかで、すでに届出手続もとられている遠藤に対してされたとみるのが当事者の合理的意思に合致するといわなければならない。
(被控訴人の認否)
控訴人の右主張は争う。
証拠関係は、原審及び当審記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、それをここに引用する。
理由
当裁判所も、当審における資料を加えて本件全資料を検討した結果、控訴人の本訴請求は理由がないので棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は、左のとおり訂正、補足するほかは原判決理由説示(原判決七枚目裏一〇行目から同一三枚目裏三行目まで)と同一であるから、それをここに引用する。
(原判決の訂正)
原判決一〇枚目表末行「作成されたこと、」の次に「遠藤は本件土地のうちB土地については、何人かからもこれを買い受けた事実はないこと、」を加え、同裏三行目「五月二五日」とあるを「五月二四日ころ」と訂正し、同一一枚目表六行目「できない。」の次に「当審における控訴人本人尋問の結果も右認定を左右するに足りず、」を加える。
(控訴人の当審における補足主張に対する判断)
控訴人は、「本件土地は、控訴人から遠藤に引き渡され、支配の移転があつたとみるべきである。」旨主張するが、訂正・引用した原判決理由説明示の証拠関係、事実関係によれば、原判決挙示の甲第一、第二号証(売主を控訴人、買主を遠藤代理人城西建設とし、本件土地を遠藤が七五〇〇万円で買い受ける旨の売買契約書)は遠藤の関与なしに作成されたものであり、遠藤は本件土地のうちA土地を相互商事から買い受けたものであつて、本件土地のうちB土地については何人からも買い受けた事実はなく、かつ、遠藤と控訴人との間では本件土地に関しなんら代金授受の事実はないのであり、本件届出(本件土地について昭和五四年一〇月三日付けでされた譲渡人を控訴人、譲受人を遠藤とする農地法五条一項三号の届出)は、実際に締結された本件土地の売買契約関係をそのままにあらわしているものではないのであるから、控訴人主張にかかる、本件届出をする旨の合意が控訴人・遠藤・城西建設間に成立して、本件届出がなされ、その後同年一一月一五日に本件土地の売買残代金三七五〇万円が城西建設から控訴人に支払われた事実をもつて、控訴人主張のような遠藤に引き渡したとみることはできないし、他に控訴人・遠藤間に本件土地の引渡しがなされた事実を認めるに足りる証拠はないから、控訴人の前記主張は採用することができない。
してみれば、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 後藤静思 裁判官 奥平守男 裁判官 橋本和夫)